高知生まれの二人が
神戸で見つけた宝物

路地裏スタンド アベック

恒光 楓菜

高知生まれの二人が
神戸で見つけた宝物

「ゆうちゃんに髪を切ってもらうときは、いつも完全におまかせ。毎回少しずつカラーは違うのに、絶対にしっくりくる状態に仕上げてくれるんです」

『路地裏スタンド アベック』の店長・恒光楓菜が通うヘアサロン『lety』。美容師のYU(ゆう)さんは、恒光と同じく高知県出身で同い年。しかも偶然にも地元の共通の友人がいることもあり、いつの間にかお互いの店を行き来する仲になったそう。

いつもはプライベートな話で盛り上がっているけど、この日はちょっとマジメに、改めて仕事の話をしてみることに。

立ち飲みとヘアサロン。異なるジャンルで活躍する二人の、仕事との向き合い方とは?

信頼できる人柄と、ブレない仕事

「楓菜ちゃんと初めて会ったのは、私がスタイリストデビューしたての頃だったと思います。インスタを見て来てくれたんですよね」

「施術中は二人の空間という感じ。旅行や恋愛、いろんな話ができるのが楽しいです」と、ゆうさん。いつの間にか土佐弁混じりになるのも同郷ならでは!

大阪の専門学校に通い、そのまま大阪のヘアサロンに就職するつもりだったという。神戸に来るきっかけになったのは、「大阪は都会すぎるし、神戸はオシャレでいいんじゃない?」という母の一言だったそう。

神戸に移り住んだ当初は「ホームシックで毎日泣いてました(笑)」と話すが、努力を重ねて入社から2年4ヶ月でスタイリストデビュー。お客さまを全力でかわいくしたいという想いと技術に惹かれて、いまではたくさんのファンがいる。

もちろん恒光も、その一人。

「ゆうちゃんが作ってくれるヘアスタイルはブレないっていうか。“あ、なんか今回はイマイチしっくりこないな”ということが一切ないんです。私らしさがあるのに、“ゆうちゃんのスタイルだ”ってわかるようなこだわりも感じるんですよね」

友人としてはもちろんのこと、その仕事ぶりにも絶大な信頼を置いている恒光。

ここで、お互いの仕事について改めて話してみることにした。

対照的なコミュニケーションスタイル

「いつもスタイルをおまかせしてるけど、普段どうやって相手の好みを引き出して形にしてるのか気になります。美容師さんって、より密で繊細な接客が必要やと思うから」

ひとりのお客さまとじっくり向き合う美容師。

短い時間のなかで、テンポ良く大勢と向き合う立ち飲み屋。

お客さまとの距離が近いという点では、二人の仕事はよく似ている。けれど、コミュニケーションの取り方は対照的だ。

「初めての方だと、だいたいスタイル写真を見せてくれるんです。その時点でなんとなく好きな系統はわかります。たとえば会話中に“韓国アイドルが好き”みたいな話が出たら、ニュアンスもそっちに寄せてみたり。たくさんの引き出しが必要ですね。ライフスタイルや服装、セットの仕方、いろんなところから汲み取っていく感じでしょうか。美容師さんってわりと自分のやりたいスタイルが決まってることも多いけど、私はその人に合わせた提案をしています」

施術はとにかく丁寧に。たとえばボブなら、前を向いたときに揃っていても下を向くと中から毛先が飛び出てくることも。「どんな角度でも美しいように繊細にカットしますし、スタイリング後まで髪に向き合います」

一方でゆうさんは、アベックで働く恒光を見てこんなことを思っていたそうだ。

「やっぱり同い年で店長としてバリバリやっているのはすごくかっこいいなって。私は美容師なので、お客さまによってはあまり喋らない時間もあるんです。だから逆に、どのお客さまに対しても対等に喋りかけられる楓菜ちゃんのトーク力の秘訣を教えてほしいです。ちょっとその力を分けてほしいと思うぐらい!」

確かに、次から次へとお客さまが入れ替わる小さな立ち飲み屋では、ひっきりなしに会話が飛び交っている。

店のムードを引っ張る店長は、どんなふうに会話の切り口を探しているのだろう?

「週末なら60人くらいのお客さまとワイワイ会話をするので、言葉が正しいかわからないけど、もう無意識なのかも(笑)。でもやっぱり共通の話題は一番盛り上がりますよね。誰とも喋らずに飲みたい方もいるので見極めは難しいけど、たとえばスマホケースのステッカーから会話を膨らませることも多いです。私はお笑い好きなので、芸人さんやどこかのお店のステッカーを目にしたら、それについて話しかけてみたり」

しっかりと仕事に向き合う二人だけど、実はいまお互いに悩んでいるのは後輩とのコミュニケーションだという。

「厳しさ」と「優しさ」は表裏一体

自分が指導する立場になると、後輩との関係性という、これまでにはなかった壁にぶつかることがある。

「私は性格的にあまり人にガツガツ言えるタイプじゃなくて。もうちょっとこうした方がいいかなと思っても、なかなか言えないことがありますね。今日こそは言おう!って決心するんですけど…。たとえばお客さまとの会話の仕方を指摘したとしたら、その子が今後話すことが苦手になってしまうかも?ということまで考えてしまうんですよね」

後輩への伝え方に迷うゆうさん。それを聞いた恒光はこう話を続けた。

「自分自身の経験もあって、特に後輩たちには言葉を考えて伝えようと気をつけてます」と恒光

「うちでは24歳の私よりも若い子たちがやる気を持って働いてくれていて。正直、自分がみんなと同い年だったらできなくて当たり前だろうなと感じることもあるんですよ。でも、うちは社員とアルバイトの境界線がいい意味であまりない。だからこそ、厳しいかもしれないけど“もっと頑張ってほしい”と思ったりもするんです。これは自分のなかでの葛藤ですよね」

厳しさと優しさは表裏一体。スタッフを率いる立場になった二人は、そのあいだで揺れながら答えを探している。

未来のはなし

最後に、未来の話を聞いてみることにした。

まずは、店長として店をまとめる恒光。

「これから年齢を重ねていきます。私は若くして店長を任せてもらえたけど、今後いまの場所でポジションが変わらなかったとしても、やっぱり自分なりに大きく成長していかないといけません。より多くのお客さまに楽しんでいただきたいし、アベックというお店以外でも自分のできることが広がっていけたらいいな。肩書きにとらわれずに、広い視野で経験を積んでいきたいです」

自分のお店を持つことを夢にしているゆうさんは、こう話してくれた。

「私は、美容師になると決めたときからいつかは独立したいなと考えていました。とにかくいまは、いまできることを積み重ねていくことだと思います。美容師の仕事は、技術はもちろん、数字でも判断されるシビアな部分があるのも事実。そこにもきちんと向き合って、どんどん仕事を任せてもらえるように成長したいですね」

仕事や友情、居場所。神戸で見つけた宝物は、形を変えながらも輝きを増していくはず。

特別なことよりも、いまできることを一つずつ。その積み重ねの先に、それぞれの未来が続いていく。

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