変わることを
選んだ人にしか、
見えない景色がある

The AVERY'S IRISH PUB × ル・クロワッサン・ド・バカンス

田中良 × 追中隆

変わることを
選んだ人にしか、
見えない景色がある

静と動なら間違いなく「動」の行動力の人、田中良。言葉数は少ないけれど、静かな情熱を秘めた「静」の人、追中隆。水と油のように本来は混じり合わないものでも、人と人なら思いがけない化学反応が起きることがある。

今回お届けするのは、そんな対極な二人の店長による遠慮なしの本音トーク。

「何考えてるかわからへん」から始まった関係

追中:バカンスがオープンしたのが2017年。良さん(田中)と会ったのは、オープンして数ヶ月経ってからやったと思います。

田中:そうそうそうそう。

追中:社長の右腕みたいな良さんって人がいるって、優馬(ベーカリーバカンス店長の村本)からずっと聞いてたんです。一体どんな人なんやろうって、しばらく僕のなかでは謎の人でした。

田中:バカンスがオープンしてしばらくして、テレビに取り上げていただいて忙しくなった頃、俺が“パンとワインの部”っていうバカンスの夜営業に入ることになって。そのあたりから関わり始めたんちゃう?

追中:ですね。ちなみに、良さんの第一印象言ってもいいですか?

正直、めっっっちゃくちゃ怖かったです(笑)。いつも何かを考えていて、言葉にどこか圧がある感じで。「僕の言葉はこの人に通るんかな」って思ってました。最初は「あ、なんか(仲良くなるのは)無理かも」と思って、なるべく優馬を介して喋るようにもしてましたね。

「笑顔なのがまた怖かったんですよ…(笑)」と追中

田中:そうなん!?(笑)

逆に、俺は隆(追中)の方が何を考えてるんか全くわからんかった。何かを聞いてもうんともすんとも言わへんし。「嫌われてるんちゃうかな」って、ちょっと本気で思ってたもん(笑)

少しずつ噛み合ってきた歯車

田中:でも隆は、昔に比べてマジでよく喋るようになったと思う。俺に対してじゃなくて、周りの人にみんなに対して意識的にそうしてるなと。何考えてるんかわからへんかったけど、わかるようになってきた。

追中:それ、良さんが変わったからじゃないですか?

田中:ちゃうって、隆が喋るようになったからやって!(笑)

追中:でも確かにそうですね、積極的にスタッフにも声をかけるように努力するようになりました。もともとそういうのが苦手やったんですけど、バカンス2号店の『ル・クロワッサン・ド・バカンス』で店長になることが決まって、このままやったらアカンなって。

田中:隆は心の中を一旦きちんと整理してから話したいから(言葉を発するまでに)時間がかかるタイプなんよね。そこに気づいてから、「自分をちゃんと持ってるんやな」って安心したのをめっちゃ覚えてるわ。

追中:逆に僕から見て良さんは、一言で言うとほんまに角が取れたなと思います(笑)

昔はめっちゃ強い武将みたいな感じやったんすよ(笑)

田中:武将(笑)

追中:でも僕が感じていた第一印象とは全く逆で。すごく相手のことを考えてくれる強くて優しい人なんやとわかってから、距離が縮まりました。なかなか僕の言葉が出なかったとしても、時間を置いてからまた「どう?」って聞いてくれるし、何かあったらまず良さんに話を聞いてもらうようになりました。

田中:隆はゴールから考えるタイプで、俺はスタートから考えるタイプ。アプローチは全然違うけど、実はお互いが話してる内容や大切にしたいポイントは同じやから、会話がおもろいよね。

パンの生地を運ぶ車の中でいろんな話をするようになって、「この時間めっちゃ嬉しいんですよ」って言ってくれたときは、隆もめっちゃ変わったなぁと思ったなぁ。

率直に、「やりがい」って?

田中:人生でも仕事でも、俺は自分が「面白い」と思えるものを選びたい。18〜19歳の大学生時代からずっとこの飲食の世界におるけど、やっぱりこの仕事のやりがいは、誰かに喜んでもらえることやね。綺麗事に聞こえるかもしれへんけど、ほんまにそう思ってる。

追中:僕は高校生の頃、やってみたいと思っていたのは飲食じゃない仕事でした。

田中:おぉ、何やったん?

追中:一つは音楽で、もう一つは漫画とかアニメを作る仕事です。ただそれは親には言えなくて。何かを作り出すことが好きだったので、親には飲食をやりたいと言って製菓専門学校に行ったんです。とにかく地元の広島から大阪に出てこれたら、途中で道を変えてもいいやと思って(笑)

田中:そうなんや。そこから結局飲食の道に進んだわけやけど、今の隆にとってのやりがいは?

追中:パン屋って小売りなのでお客さまの顔が見えない。でも顔が見たいから、オープンキッチンにしてもらったんです。やっぱり「おいしい」って言ってもらえるのが一番ですけど、「おいしくない」と言われることも僕にとってはやりがいではあります。むしろ、正直その方が燃えます。じゃあ次はどうやって作ろう?と考えていけるので。

田中:おぉ〜。なんか、そうやって仕事に生きがいを持っている人を見るとやっぱり燃えるわ。

追中:行動力や器用さに憧れて、良さんみたいになりたいなって思ってた時期も実はありました。
あとは、『ひつじアンダーグラウンド』のヒロさん。

あれだけ一つのことを突き詰めていけるのはカッコいいなと思って、たまに飲みに行って喋ったりもしましたね。

ちなみに田中の目にイキイキと映るカッコいい人は、三宮のワインバー『クレイエール』のソムリエであり、大学時代の同級生でもある大森さんとのこと

絶対に忘れたくない大切な「原点」

田中:振り返ってみると、やっぱりコロナは俺らにとって大きな分岐点やったね。急にリセットボタンを押された感覚やったからこそ、飲食業の根本を考えるきっかけにもなった。

隆とはコロナ禍の真っ只中でクロワッサンの立ち上げを一緒にやったけど、ほんまいろいろあったよなぁ〜。ありがたいことにオープン当初から大盛況で、インスタのコメントには厳しいコメントをたくさん書かれたりもしたけど(笑)

追中:ですね(笑)。でも予想外の忙しさだったので、とにかく今自分にできることをしようとがむしゃらでした。思うように営業できないお店があるなかで、僕らが頑張っていかないという気持ちで必死でしたし、一緒に働いてくれている子たちが食いっぱぐれないようにという思いもありました。

田中:世の中が大きく変わったけど、できることはとにかくやったよね。朝はバカンスマルシェをしたり、夜はエイバリーズで“WEBパブ”をしたり。マルシェはいろんな人が来てくれて、嬉しかったなぁ〜。お店の価値って、ただ食べ物や飲み物を提供するだけじゃないんやなと本当の意味で身に染みたよね。

追中:「リッチな気分を楽しんでもらいたい」というクロワッサンのコンセプトは、世間の暗いムードのなかに明かりを灯せたんじゃないかなと思います。何より、この先どうなるのかわからない状況のなかでお客さまが来てくれることが、こんなにも嬉しいことなんやと感じられましたよね。

田中:ほんまにそう。この気持ちは絶対忘れたらアカン、原点やね。

自分の変化も、世界の変化も、恐れず受け入れて立ち向かえる。

あの日々を共にしたからこそ見えた景色が、今も自分たちの背中を押している。

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